古月琴坊

二胡製作大師 萬其興氏

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萬 其興(Wan Qi Xing)

1938年、上海の北西にある街、無錫に生まれ、15歳から蘇州の楽器店に勤めて二胡製作を学び始める。
その後、蘇州の民族楽器工場で、二胡製作職人としてのキャリアをスタートさせる。
1990年に独立して自身の二胡製作工房「古月琴坊」を設立。
長きに渡り二胡を研究し、その二胡製作の知識と経験から生まれる品質は、プロの演奏家にも愛され、最高の職人として中国全土より評価を得ている。

萬其興2

1953年の夏、わずか15歳の萬其興は蘇州へ渡り、師匠と二胡製作の勉強を始める。生まれつき聡明な為、3年足らずで18歳の萬其興は一人前となった。当時、最も若い製作師だった。
「あの時代は作業環境が悪く、二胡を一本作るにも長い時間がかかっていました。二胡の音色や見た目、全てにおいて不良品は許されないため、一日中工房で作業をしていました。」と当時の状況を思い出していた。

萬其興は二胡製作において極めて厳格で、彼の手で製作された二胡はどれも精巧で美しい芸術品と言えるだろう。材料の選別にもこだわりがあり、インドの紫檀か明清時代の老紅木を使用する。
音色については絶えず改良を重ね、ニシキヘビ皮の選別から前段階の乾燥処理、皮張りから最後のチューニングまで、全て自分で行う。

萬其興の丹精こめて育てあげた二胡は『萬スタイル』の特徴を持つ。
音が大きく良く通り、パワフルで、音色はふくよかで柔らかく、上から下までポジション移動がスムーズである。まるで江南地区の水郷のように柔らかで美しい二胡は多くの著名二胡奏者から認められている。
陳耀星(チンヨウセイ)、鄭建棟(テイケントウ)、楊易禾(ヨウエキカ)、馬友徳(マヨウトク)ら有名演奏家が使用している二胡は、全て萬其興の手で作製された。

50数年間の努力を経て、前身の無錫市で初めての人民公社工場となる『梅村楽器工場』から、現在の萬氏が率いる『古月琴坊』が設立された。職人の大半が萬其興の弟子であり、『萬スタイル』の楽器はここで代々受け継がれている。
「今はもう年なのでそんなに多くの仕事は出来ないが、やはり多少不安もあります。特に皮張りの作業はチェックする必要がある。皮張りの工程は二胡の喉みたいなもので、そこの発声しだいで音色が左右される、最も重要なポイントです。」
萬其興は心を込めて二胡を作ることで、二胡と一体になっている。楽器と心が通じ合ってはじめて心に響く音色になる。

無錫市の二泉広場にある阿炳記念館に入ると、熟知した『二泉映月』の曲と共に、阿炳の故居の全てを感じ取れる。
いくつかの狭い部屋と一本の二胡、まるで阿炳の傍らにいるような気持ちになる。ここの二胡は当時阿炳が『二泉映月』の収録で使用した二胡をもとに復元されたもので、その復元作業をしたのが萬其興である。

現在、萬其興は毎日工房で寝泊りをしている。質素な小部屋にある古筝とルームランナーは彼の文化・娯楽・運動活動の全てである。
「私は運動が好きで、若い頃はサッカーのシュートが得意でした。今も暇な時はテレビでNBAの試合を見てロケッツのヤオ・ミンを応援してるんですよ。」
70歳を越えているけれども、日々の生活はシンプルで充実している。

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二胡製作師 黄建洪氏

古月琴坊を率いる萬其興老師の薫陶を受け、二胡製作技術を間近で学んだ黄建洪氏の楽器は、それぞれ異なった特長で弾き手を魅了します。伝統的な手法を用いた萬老師の知識と技術を、自らの作品に見事に昇華させた両名の"収蔵版"二胡を是非お試し下さい。

黄建洪

黄 建洪(Huang Jian Hong)

1990年代初頭、巨匠・萬其興老師と共に「古月琴坊」を創業。苦難の道のりを経て、二胡に対しての独自の見解を持つに至った。
上質なニシキヘビ皮や木材の選定には独自の基準があり、黄氏の要求に合致する原材料こそが、独特なスタイルを築き上げる要となっている。
彼の作風は独自の流れを汲み、萬老師の娘婿として一番に萬氏からの指導を受けたのは勿論のこと、蘇州や上海の名高い技術者と長きにわたり技術交流を深め、彼らの特長も取り入れて自身の製作技術と融合させた。
その甘く柔らかな音色を湛えた独特なスタイルは、既に多くのプレイヤーから称賛を受けており、同世代の二胡製作師の追随を許さない。


二胡製作師 ト廣軍氏

古月琴坊を率いる萬其興老師の薫陶を受け、二胡製作技術を間近で学んだト廣軍氏の楽器は、それぞれ異なった特長で弾き手を魅了します。伝統的な手法を用いた萬老師の知識と技術を、自らの作品に見事に昇華させた両名の"収蔵版"二胡を是非お試し下さい。

ト廣軍

ト 廣軍(Bo Guang Jun)

二胡製作大師 萬其興老師の娘婿であり最後の弟子。
萬老師の丹念な指導の下で20年近く二胡製作を学んだ、次世代を担う若手二胡製作者。
萬氏より製作技術の極意を授かった、黄氏と並ぶ、言わば二胡製作技術の正統後継者。
琴筒表面はムラなく綺麗な光沢があり、継ぎ目も滑らかに整えられており、蛇皮の厚みは熟練された力のかけ具合で均等に張られている。
ト氏はこれら優美で緻密な二胡を息つく間もなく仕上げて行く。
音質は輪郭がはっきりして安定感があり、純朴且つ尖りのない明るさがある。
どのポジションでも音量があり、特に高音部での減衰が少ない。
その芯のある透き通った音色により、既に新世代の巨匠とも目されている。


二胡製作師 施忠氏

高級二胡工芸師 王根興氏に師事して二胡製作を学び、分業が徹底されている二胡製作の世界において、全ての部品製作から加工を一人でこなせる数少ない若手二胡製作師 施忠氏が製作する上海二胡は、初めから弾き込まれているかのような柔らかい質感があります。

施忠

施 忠(Shi Zhong) プロフィール

1969年生まれ、上海の二胡製作師。
1985年、上海民族楽器一廠に入社、高級工芸師除振高氏に古箏製作を学ぶ。
1996年より、上海敦煌楽器有限公司で高級二胡工芸師王根興氏に師事、二胡製作を学ぶ。
2006年、施忠民族楽器工作室を設け独立。二胡を初め、中胡、高胡、申胡、越胡、京胡、板胡、などを製作。
分業が徹底されている二胡製作の世界において、全ての部品製作、加工を一人でこなせる、数少ない若手職人。
既成の製作方法や概念にこだわらず、新しい形状や新材料の使用も積極的に試みる、二胡発展の次代を担う期待の二胡製作師。


二胡製作師 満瑞興氏

二胡や各種民族楽器の製作において絶えず新たな製作技法を打ち立て、大胆な改革を行って独特な技巧を確立、国家レベルの民族楽団や著名演奏家にも愛用されている北京の満瑞興氏工房で製作される北京二胡は、十分な音量と明瞭な高音域を兼ね備えています。

満瑞興

満 瑞興(Man Rui Xing) プロフィール

1937年、河北省生まれ。
若かりし頃に有名製作家の沈文忠、傳立山の各氏に師事。
先達の豊富な製作経験を土台に、絶えず新たな製作技法を打ち立て、多くの著名演奏家と共に二胡や各種民族楽器において大胆あ改革を行い、オリジナルで独特な技巧を確立させた。
材料選びに妥協せず、精緻な技工、優美な造形、ピュアな音色をもつ満瑞興氏の楽器は、中華人民共和国の文化部科学技術成果奨を何度も受賞している。
また国家レベルの民族楽器楽団とされる中央民族楽団・中国播民族楽団、国内外の著名演奏家や収集家などにも幅広く愛用、秘蔵されている。

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